映えない

人生が映えない人間は写真も映えない

幸せな結末

優勝翌日にコンビニで買ったスポーツ新聞。神奈川なので「全部売り切れ」なんてことにはさすがになっていなかった。

阪神タイガースが本当に優勝してしまった。

18年ぶりというわけだから、これはもうかなりの年月である。赤ん坊が成年になってしまう。2005年の優勝がそんなに遠い昔のこととは思えないのだが。

自分の人生でタイガースの優勝を見届けるのは1985年、2003年、2005年に続いて4度目。

もっとも85年のときは7歳ぐらいだから優勝の瞬間はあまり覚えていない。神宮で中西が投げて引き分けて決まったというのは覚えているけど、厳密にはそれはスポーツニュースで見た光景だったのかも。

2003年はバイトをしていた。翌朝、地元市内のコンビニを原付で回ったけど、どの店からもスポーツ新聞が消えていたのが印象的だった。

2005年はどうだったか覚えていない。その頃にはもう関西を出て神奈川に住んでいたから、甲子園での阪神の優勝決定戦は地上波しかなかった家では見られなかったのではないか。でも金本がレフトフライだかレフトライナーだかを捕った光景はなぜか覚えている。

今年2023年の優勝に関しては、自宅で観ることができた。仕事を終えてから「せっかくだし」と思って代々木のHUBで観ようかと思ったのだが、すでに大量の阪神ファンがいて、座れる場所からはテレビのモニターが見えづらかった。そこから電車に乗り込み、速い試合展開にヤキモキしながら帰宅。途中で佐藤がホームランを打って、ほぼ決まるなこれはという流れだ。

実は今年、早い段階で9月17日、18日、22日、23日のチケットを取っていたので、このあたりで決まるのではないかとワクワクしていた。20年に1度ぐらいしかないタイガースの優勝を生で観ることができたら、我が生涯に一片の悔いなし、とまでは言わないけど、まあ「生きててよかった」ぐらいの感慨はあるのではないか。

だから正直なことを言えば「11連勝で一気にマジックが消える」という事態はいささか惜しいという気持ちもあったのだが、大山が号泣するのを見たら落涙せずにはいられなかった。ドラフトで悲鳴を上げられ、一軍の試合に定着してからも調子の波が激しく、ボロカスに言われてもいつも誰よりもポーカーフェイスで、でも時折打つホームランの放物線がNPB屈指の美しさの大山が号泣していたら、そら泣かないわけにはいかんでしょ。

そのあとはスカイAのビールかけ中継(岡田とミエセスのやりとりは最高だった)や、阪神おなじみの「朝方まで選手が入れ代わり立ち代わり各局の特番ブースに来て眠そうに喜びを語る」番組を観て、気がついたら朝になっていた。阪神ファンだったら、翌朝目を覚ましたときに思うもんなんじゃないだろうか。「ああ、ほんまに優勝したんや」と。

2023年9月15日朝、阪神優勝を報じるスポーツ新聞は最寄りのコンビニにちゃんと置いてあった。

心配は尽きない。今の調子が良すぎてCSであっさり敗退しないかとか、日本シリーズで勝てるのだろうかとか。でも同時に、日本一になる瞬間は現地で観たいと思っていたりする。そして11月はじめ、屋外で野球を観るにはもう寒い時期に「初の連覇、できるかなあ」とまた新たな不安が頭をもたげていればいいのに、と期待していたりするわけなのだ。