ファウルチップ
前回までのざっくりとしたあらすじ
知人から紹介された女性にピンときた僕は彼女をランチに誘い、成功。しかし1度目のデートを野球の打席として表現した結果、それは「三振」であった。
…と書いておいて何だよ、と思われるかもしれないが、実はまだ三振なのかはわからない。でも限りなく三振に近いブルーだと思う。
話は弾んだ。でも2時間半ほど一緒にいた間、その9割ぐらいはカメラとか写真の話だったと思う。それは相手の女性が写真をやっているからなのだが、それにしたって「バウンス」とか「作った料理を自然光でいい感じに撮りたいがそもそも部屋がダサいのでうまくいかない」とか「ライトはGODOXが安くて使える」とかそんなネタばかり話すのはどうなのか。
裏を返せばそれは「そういう話でもしないと盛り上がらない」ということだったのかもしれない。話している最中は気づかなかったけど。
おまけにほとんど自分の話をしてしまった。まだ関係性があやふやなうちに「自分の話ばかりをしてしまう」というのは致命的である。というか、そもそもデートに限らず「自分の話ばかりしてしまう」という人は、無能であることが多いのではないかと思う。できる人というのは基本的に「聞き上手」な人だと思うのだ。そしてそれをわかっていてもなお自分の話ばかりしてしまうというのは、これはもう単純明快にバカであるということにほかならない。
最後のほうでは会話の流れから「車を運転したりしますか?」と聞かれたのだが「運転に向いてないんですよ。車の運転というのは明確に向き不向きの性格があると思っていて、自分は確実に不向きのほうだと思うんですよね」と答えてしまった。そんなネガティブな雰囲気で答えてどうする。そのあと「運転自体は嫌いじゃない」というフォローは入れたものの「でも下手。石垣島で久々にレンタカーで運転したときは肝を冷やした」と、どうしても思っていることを話してしまわずにいられない。
解散したあと、先方から「またゆっくりお茶をできれば」とお礼のLINEが来たので「今度はこんなお店はどうでしょう。◯月◯日に」と返したところ「仕事のスケジュールがわかってから連絡します」ということだった。
「なんだ、三振してなくね?」と思う人もいるかもしれないが、自分の中では「ファウルチップがそのままミットに収まって三振」ぐらいの感覚である(野球知らない人だと何言ってんのかさっぱりわかんねーだろうな)。
前から知ってはいたつもりだったけど、自分が大人のコミュニケーションをできない(する気がない)ということを痛感した。しかも相手は自分より一回りほど年下なのに、僕のほうがよっぽど幼いというか、子供のようなコミュニケーションスキルしかない。相手は大人の態度で「はいはい」という感じでいろいろ質問してくれたのかもしれない。40半ば過ぎて承認欲求持て余したようなおっさんと付き合いたい女性がどこにいるだろう?
今は平気だけど、デートのあと1日ぐらいは、うまくいくとかいかないとか以前に自分のダメさ加減にくらくらしていた。「わ〜つきあえないよ〜」という落ち込みだと思っていたのだが、そうじゃなくて実態は「わ〜俺やっぱりクソ人間〜」という今更な自己認識のドツボにハマっていた。
そんなことを考えると、先方にも「まあこの人はちょっとそういう相手としてはないけど、紹介してくれた人の顔も立てなきゃだし」というような思いがあったかもしれない、などと推測してしまい、「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!ほんっとすみません゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!!!!生きてて!!!!!!!!!私みたいなもんが!!!!!!!!!」というような恥ずかしさばかりが込み上げてくる。
というわけで、2度目のデート(誘ったこと自体、自分自身に「この身の程知らずが!」と絶叫したくなる)について「ごめんなさい、どの日もスケジュールが」というようなことになったら、僕はそっとバットを置こうと思う。やはり三振は三振だったのだ。リクエストしたって無理なんだ。
