映えない

人生が映えない人間は写真も映えない

ほんの短い夏

X-T2 + XF56mmF1.2 R

今から約30年前、「泣きたい夜もある」というドラマが毎週日曜の夜に放送されていた。

1話完結の30分のドラマで、登場人物は毎回少なく、しんみりする終わり方の話が多かった。つまりハッピーエンドというよりはビターエンドな物語が中心だったのだ。

当時自分は中学生で、たぶん「欠かさずというほどじゃないけど、いつの間にか毎週観るようになっていた」ドラマだったのだと思う。当時はSNSなんてないしテレビ雑誌なんてものもほとんど買わなかったから、なんとなく毎週観るようになったのだろう。

放送されていた1993年は自分が中学3年の年で、部活も引退して数年ぶりに母方の実家の新潟県山古志村で夏休みを過ごしていた。「泣きたい夜もある」は4月から9月まで放送されていたのだが、自分としては「夏に観た」という印象が強い。実際、夏にしか観ていなかったのかもしれない。

どんな物語があったのかというと、ほとんど覚えていない。かろうじて記憶しているのは、離婚を決めた夫婦の最後の夜の物語で、2人がよかったことも悪かったことも思い出して、結婚したこと自体は後悔していないけど、それでもやはり別れるという内容だった気がする。気がする、というのは、本当にその話がこの「泣きたい夜もある」だったかどうかいまいち記憶に自信がないからなのだが。

いずれにせよ「泣きたい夜もある」は自分にとって「毎週末になんだか切ない気持ちにさせられる」ドラマで、伊勢正三が歌う主題歌「ほんの短い夏」のメロディもずっと頭に残っていた。というか、さっき早朝に目を覚ましたらなぜかこの曲のメロディが頭に浮かんで、自動的にドラマのことも思い出してしまった。

検索すると、「泣きたい夜もある」を覚えている人はそれなりにいるようだ。Wikipediaを見ると木村拓哉が出演していたりして(全然覚えてないけど、その話は観なかったのかもしれない)少し驚くが、DVD等は発売されていない。おそらくジャニーズ関連のめんどくさい事情な気がするが。

あれから30年近くが過ぎた。山古志村の家は中越地震で全壊して、もう存在しない(とんでもない田舎だったけど好きな場所だった。本当にとんでもない田舎なんだけど)。母方の祖母はもう亡くなったし、父親も今から3年前の8月にあっけなく死んでしまった。

ドラマに出てきた夫婦のように離婚することもなく(なぜなら未婚だから)、髪に白いものも交じるようになった僕は、サブスクで「ほんの短い夏」を聴きながら一人、日曜の朝にこの安っぽくセンチメンタルな文章を書いている。中学3年の自分に「30年後は月1000円ぐらい払えばいろんな音楽が聴き放題になるんやで。しかもレコ屋に行かなくてもな」と言っても、たぶん「何言ってんねん」と返されるだろうな。

ところでこのドラマが放送されていた頃の伊勢正三、今の自分とほぼ同い年だ。