辺景・近景

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オン・ア・プレイン

 自分は集団での会話が苦手だ。

 最近、職場でちょっとしたお茶会のようなものが開かれた。人数はだいたい10人ぐらい。それ自体については特に何も思うところはないのだが、みんなが楽しそうに話しているのに、自分はどちらかというと仏頂面な雰囲気で黙り込んでしまうのである。

 別に不機嫌なわけではない。そこで繰り広げられている会話がつまらないとも思わないし、口を挟んでみようかと思うようなこともある。しかし結局自分は会話に参加しようとはしなかった。なぜか。

 単純に、会話に割り込んでいくスキルがないからである。

 サッカーに例えると、「話題」というボールをみんなが転がしている中で、自分はどうしても蚊帳の外にいてしまう感じ。サッカーよりラグビーかな。まあいいや。うまくボールを支配する人が何人かいるのを、なんとなくぼーっと見ているだけということだ。

 会話に割り込むスキルがないというのは、10人ぐらいいるメンバーの大部分に面白いと感じさせるような話をすることができないということ。これまで、がんばって自分がいろいろとボールを回そうと思ったこともあったのだが、ほとんどうまくいかなかった。気にしすぎなのかもしれないが、自分が話すと、ほかの人が話しているときほどは場が盛り上がらないのである。

 そうなると、「俺が話してもなんとなく場が白けるから黙っていたほうがいいよな」と思う。だから黙ってニコニコと話を聞いていればいいのだが、この「黙ってニコニコしている」ことができないところにまた問題がある。一度もボールが回ってきそうにないなと思うと、つまんないからピッチの外に出るか、ということになってしまうのである。正直なところをいえば、件のお茶会も途中で抜けて仕事に戻りたかった。

 しかしこの10人ほどのメンバーの中で誰とも楽しく話ができないかというとそんなことはなく、相手が1人か、あるいは多くても3人ぐらいならそれなりに会話ができる。問題は人数が多いときだ。最大公約数的なトークができる人間がほかにいるなら、自分がしゃべる必要はないなと思ってしまう。あと、単純に声質の問題もある。自分の声はうまれつきとても細いから、声が大きいとかよく通る人にはどうしてもかなわない。ボールの奪い合いをするときに、筋肉隆々な人に細い人が太刀打ちできないようなものだ。

 ほかの人たちがあなたの話を面白くないと思っている、というのは被害妄想では?という意見には、「まあそうなのかもしれない」とは思う。一瞬。でもこれが、本当にわからないのである。もしかしたらみんな面白いと思っているのかもしれないし、面白くないけど笑っているのかもしれない。ある程度まともな大人なら、「本当は面白くないけどここは笑っておく」というスキルをちゃんと身につけているからだ。しかしそのスキルがない自分のような人間には、「自分の話を面白いと思っているか否か」の判断がつかない。

 面白くない話をされるのは苦痛だから、そんな苦痛を他人に与えたくないという思いで、やっぱり自分は黙ってしまう。いや、黙るほうが相手は苦痛だろと言われるとそれもそうだなと思うから堂々巡りだ。

 仮にこういった考え方が被害妄想だとしよう。しかしほかの人たちはこういうことを感じないのにどうして自分は感じてしまうのかという疑問が生まれてくる。生まれつき?それともなんらかのトラウマがある?あるいはその両方かもしれない。

 みんながボールを楽しく奪い合っているのに、変なタックルをして誰かを負傷させたりはしたくない。そして、自分が負傷したりもしたくない。だから自分は、やっぱり傍観してしまう。そんなことをしていても楽しいわけがない。サッカーの試合でボールに触ろうともしない選手がいたら変。あいつ、なんでいたの?ということになる。

 しかし、ときおりボールがふっと飛んでくることもある。傍観を決め込んでいたのに突然ボールが目の前に。古いけど、いわゆる「急にボールが来たので」という事態になってしまう。みんながこちらに視線を注ぐ中、自分は面白くもなんともない受け答えをしてしまって、場をしらけさせる。飛んできたボールを蹴ろうとするけどおもいっきり空振り。もっとトークスキルがある人が「もうこいつはいいや」と思って別の話題を投下する。サッカーなら「だめだこいつは」と交代させられるだけだが、談笑の場というピッチから出ることもできないのがつらいところだ。ベンチに下がることもできず、ボールを触ろうともせず、ピッチでぼーっとしてるやつ。バカである。

 結局、件のお茶会で自分は一言も発さなかった。みんなが楽しそうに話をしているのに、一人だけ黙ってときおり手持ち無沙汰な感じでiPhoneをいじってるやつ。なんという社会不適合者だろうか。これが人数4人ぐらいならまだもうちょっと話せるのに…とか思いながら。自分の中で、10人いても話をうまく回せて笑いも取れる人への憧憬と妬みの入り混じった思いが発酵していく。

I know it's wrong so what should I do? / I'm on a plain / I can't complain(間違ってるのはわかってる、でもどうすればいい? / 俺はだだっ広い野原にいて / 文句を言うこともできない) 

ネヴァーマインド

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